研究概要 |
平成18年度の研究実績は以下の通りである。 1.観測・データ収集 高山市大八賀川流域のスギ林観測サイトに28個の林内雨量計を設置し,樹冠通過雨量の計測を行った.同時に,樹冠疎密度と樹冠通過雨量の関係を調査するため,28個の林内雨量計の直情の樹冠疎密度を全天写真により計測した. 2.降雨遮断効果の分布モデルの作成 林外雨量には,スギ林観測サイトに建設された30mのフラックス観測タワーの最上階に設置された雨量計の観測値を用いて28個の雨量計ごとに樹冠遮断率を算出した.また,雨量計ごとに樹冠遮断率を算出し,樹冠疎密度と樹冠遮断率の比較を行った. 既存の研究において,樹冠疎密度やPAIと樹冠遮断率の間には相関が無いとの検討結果が出されている.しかし,本研究において,一降雨イベントにおいて観測されたデータのみを用いたところ,イベント毎に大きく遮断率が変化する林内雨量計がいくつか存在した.これは,滴下雨が発生しやすい箇所に設置された雨量計において,イベント毎の滴下雨の発生の有無が観測林内雨量,遮断率のイベント毎の違いに影響していると考えられる.滴下雨は林内総雨量,水収支を考える上で重要であるが,樹冠疎密度と樹冠遮断率の関係の検討には,観測エラーとなるため,このような雨量計のデータを除外したところ,樹冠疎密度と樹冠遮断率との間に線形関係が見出せるイベントがいくつかあることが分かった.フラックス観測タワーに設置された気温,湿度計の情報から,気象条件と遮断率との関係も調査したが,明確な相関性は見出せなかった.今後は,得られた知見を元に,樹冠遮断のモデル化を行う.
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