研究概要 |
戦後,ダムや堰が日本各地の河川に設置された.ところが,ダムや堰のような河川横断構造物は河川水位を縦断方向に分断する.こうした状況は魚の河川縦断方向の移動を阻害するため,サケやアユのような回遊魚にとっては種の絶滅を意味する.そのため,ダムや堰に魚道が設置されるようになった.魚道とはダムや堰の前後の水位差をなめらかに接続,あるいは小さく分割し,魚の遡上を助ける施設である.ところが,魚道を設置しても魚がほとんど遡上しないとの報告が多数寄せられている.現在のところ,魚道内の水理特性がほとんど明らかにされていない上,水理特性と魚の行動特性との関係は全くと言っていいほど解明されておらず,対策が立てられていないのが現状である.本研究は,階段式魚道の水理特性を解明すると共に,水理特性と魚の行動との関係を解明し,魚の遡上が可能な魚道の設計指針を示すことを目的とする. 階段式魚道では流れの条件によって,Plunging状態,Streaming状態および両者が時間的に入れ替わる遷移状態が発生する.Plunging状態およびStreaming状態におけるプール内の渦の向きは逆向きとなる.魚の遡上にはPlunging状態が適しているが,流れが3状態のいずれに属するかを予測できるモデルは存在しない.本研究では,流れの支配パラメータが,フルード数,アスペクト比,相対水深および相対落差の4つであることを理論的に解明した.続いて,この結果をスケールアップし,現地魚道で検証した.今まで,魚が遡上するには,魚道内流速が魚の突進速度を下回ればよいとされてきた.しかし,この条件を満たさなくても遡上に成功している魚を確認した.速度計測を行い,組織乱流理論から渦スケールを参集したところ,魚が遡上に挑むかどうかは流速だけでなく,体長と流体魂の長さスケールの比が影響することを解明した.
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