研究概要 |
平成17年度の研究では,Nakamura・Kondo(2002)が提案している廃棄物産業連関モデルに家計消費構造と家庭系一般廃棄物排出構造の従属的な関係を取り込み,産業廃棄物・一般廃棄物処理の所得乗数モデルを提案するとともに,事業所統計,廃棄物処理プラントデータを利用して1995年増補型廃棄物産業連関表を完成させた.産業連関表中分類表,大分類表に基づく経済主体間の取引だけでなく,その経済主体が結合産出・結合投入する廃棄物フローを明らかにした表である.また,16の廃棄物処理活動(焼却,脱水,天日乾燥,機械乾燥,油水分離,中和,破砕,圧縮,オートクレーブ,分級,溶融,切断,堆肥化,銀回収,他処理,埋立)がどのような廃棄物をどのような中間財を使って処理をしているのか示している.推計された増補型廃棄物産業連関表を適用することによって,産業の生産活動に伴う廃棄物誘発発生量,誘発投入量,財生産・廃棄物処理に関する所得効果を計測することができる.今年度は,本表を用いて,日本経済全体を対象にして研究を進めた.本研究の結果,1995年においては,廃棄物処理活動が日本経済に与えた影響は約1兆円程度であったことが判明した.その内訳であるが,産業廃棄物・家庭系一般廃棄物処理に必要な重油,化学薬品等の中間財生産を通して約2,700億円程度,そこに従事している労働者の消費活動を通して約7,100億円程度であることも判明した.また単位処理あたりの経済効果を比較すると,家庭系一般廃棄物処理に伴う経済効果8,266円/トンに対し,産業廃棄物処理は5,730円/トンであり,前者の方が大きいことが分かった.次年度では,本年度の応用として小地域における適用可能性を検討しつつ,空間的拡張ならびに都道府県レベルにおける分析を進めていく予定である.
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