研究概要 |
本研究ライフスタイル提案のための行動プロセスの仮説として,行動変化は「理想とする生き方」と「現状の生活」の間のギャップを埋めるために起こるという仮説を提案した.特に交通から生じる環境問題をターゲットとしているため,「理想とする生き方」の1要素として「環境への貢献」という要因を設定し,これが情報提供によって現状とのギャップが認識され,その結果として行動変化が起こるという仮説である.この仮説の検証のために,山梨県甲斐市竜王駅付近に居住する200世帯にアンケート調査を行った.このアンケート調査はオンライン調査と紙調査の選択を可能にした.内容としては1)個人世帯属性,2)環境意識(環境保護に対する態度,環境小調査に基づいた設問),3)価値観意識(どのような生き方に共感できるかという意識,Japan New Way Of Life調査に基づいた設問),4)アクティビティダイアリー調査(平休日3日間)の4種類から構戒されている.環境意識は「環境への貢献」の重みの観測指標として,価値観意識は「理想とする生き方」の観測指標として設定した. これらの調査項目を約1ヶ月の間をおいて2度実施した.この1ヶ月の間に公共交通や山梨県の環境に関する情報や,行動データに基づいた二酸化炭素排出量などの情報を約半数の被験者に提供し,情報提供の有無による意識や行動の変化を観測した. この実験結果では,提案した仮説は棄却された.仮説が棄却された原因としては,サンプル数の問題による統計的有意性の問題もあるが,主に価値観意識が情報提供と関係なく発生していたことにある.これは,価値観意識というものが,非常に時間的に不安定であることを示している.これらについて検討を加えて,価値観意識を安定的にする要因は何であるか,また,そのための政策のあり方についての考察を行った.
|