本年度は、昨年度研究において行ったアジア地域におけるSCM支援のための高付加価値拠点(港湾におけるロジスティクスハブ)に着目し、我が国港湾の比較優位性と今後の港湾マネージメントの方向性について検討を行った。 第一に、我が国企業のアジア地域を中心としたサプライチェインの構築状況ならびに港湾ロジスティックハブの実態について企業に対するアンケート調査による分析を行った。その結果、輸送機械、電気機器、アパレルの3つの業種等において輸送モードの選択状況、生産ネットワークの構築状況等が把握された。 第二に、これらの業種企業の港湾ロジスティクスハブの利用実態とその要因について分析した。特に、製造業における我が国港湾とシンガポールとの関係、流通業におげる我が国港湾と上海港・釜山港との関係について分析を行った。その結果、我が国とこれらの港湾が存在する地域における生産技術の水準や消費者の嗜好を反映し、我が国とアジア地域の港湾との間には、短期的なロジスティクス機能に関して機能分担の関係にあることが明らかとなった。 第三に、上記の考察ならびにアジア地域の経済見通しを踏まえた、我が国港湾ロジスティクスハブの開発戦略(対象業種、機能、.アジアにおける港湾との競合・機能分担のあり方)について輸出機能、輸入機能、中継貿易機能に分類し、短期的・長期的な視点から提案を行った。 第四に、上記の戦略を実現させるための方策として、海外の港湾におけるロジスティクスハブ開発戦略と現状の我が国の開発戦略を対比させつつ、港湾マネジメントの方向性について提案を行った。
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