研究概要 |
干潟および藻場を相互に連携する複合生態系として捉え,干潟に生息する底生動物が海草群落に及ぼす作用ならびに海草が底生動物に与える影響を現地調査,室内実験を通じて,共存の効果に着目した浅海域の自然浄化能力を定量的に明らかにすることを目的とした. 1.コアマモおよび底生動物の生息環境・機能に関する現地調査 コアマモは潮間帯にパッチ状に生育する特徴を持った海草であり,コアマモ藻場が干潟と藻場の機能を融合する空間と捉えられることから研究対象として選定した.コアマモ群落内外において底質と底生動物の分布を調査・比較し,コアマモが底質や底生動物に与える影響について考察した.株数,現存量,草長は同じパッチ状群落内でも岸側より沖側の方で大きい傾向を示し,コアマモの草長等を決定付ける要因として汀線からの距離が関係している可能性が示された.群落内に出現した二枚貝の1個体あたり平均湿重量は,群落外の個体の約2.6倍を示し,群落内は二枚貝の成長に正の効果を与えていると考えられた.また,多毛類は群落外と比較して群落内で個体数,種類数,多様度指数が高いことから,裸地と比較してコアマモ群落が多毛類の多様性維持に有利に働くことがわかった.これら結果は地下茎や根が二枚貝や多毛類に生息場を提供するとともに,コアマモ地上部の静穏効果によって懸濁物が沈降し,さらに根の枯死によって有機物が供給され,それらを餌料とする堆積物食者にとって有利な環境となることが要因と考えられた. 2.コアマモの生息環境に及ぼす二枚貝の役割 コアマモとアサリの共存によるコアマモの生育環境への効果を室内実験において評価した.アサリによる有機物の摂食,分解・無機化,放出という働きにより水槽内の環境が次の点で改善され,コアマモの生育環境が良好なものになった.(1)底質の泥化を防いだ.(2)光環境の改善がなされた.(3)海水中の栄養塩環境が改善された.
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