研究概要 |
本年度は(1)「ヨシ茎の通気抵抗特性に関する実験的研究」,および(2)「枯死茎状態の違いによる根からの酸素漏出量の違いに関する実験的研究」において新たな知見を得た。 (1)のヨシ茎の通気抵抗特性に関する実験的研究に関しては,ヨシが通気する際に重要となる枯死茎の通気抵抗に関して水理学的検討を行った。枯死茎の通気抵抗は主にその節によるところが大きく,その物理的性質はベルヌーイの定理を適応することにより,表現可能であることが分かった。その結果,従来,観測により提案されていた,生きている葉茎の根元の圧力と大気との圧力差と茎内流量との関係式(茎内部と大気との圧力差が,通気量に比例するとした関係式)が理論的に正しくないことを示し,新たな理論式(通気量は節数に反比例し,圧力差の根に比例する)を提案した。本結果は,将来的にヨシ光合成蒸散量から通気量を予測する際に重要な知見のひとつとなりうる。 (2)の枯死茎状態の違いによる根からの酸素漏出量の違いに関する実験的研究に関しては,野外では有意な結果が得られなかったが,室内実験において非常に注目に値する結果を得た。室内において,三角フラスコにヨシ根茎部と実験用溶液を入れ,根から漏れ出す酸素量の測定を行ったところ,枯死茎が通気しやすい状態であるほうが,根から漏れ出す酸素量も多いという結果を得た。このことは,浄化用湿地や自然のヨシ原において,枯死茎の刈り取りを行えば,根からの酸素漏出量を増加させられる可能性を示しており,それに伴って,湿地の環境浄化能力を向上させることが可能であることを示している。本結果は,浄化用湿地の植生管理方法に関して,重要な知見となるものである。
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