本研究で明らかとなったことを以下に列挙する。 1.刈取った枯死茎の端を塞いだヨシと空けたままのヨシによるROL (Radial Oxygen Loss)を比較すると、枯死茎の端を塞いだヨシでは30%程度ROLが減少した。 2.ROL量は光合成速度と高い相関関係を示したため、枯死茎の開閉によるROL量の違いは、ヨシの通気速度の違いの影響であると考えられた。 3.葉茎が枯死した後に折れて滑落して長さを減じることは、ヨシの光合成生長期にHIC (Humidity Induced Convection)量を増加させ、根から土壌への酸素供給という点において、有利に働く可能性を示した。しかしながら、冬場においてもVIC (Venturi Induced Convection)によってROLは起こるため、冬場に枯死茎を刈取ることが年間を通したROL量にとって有利に働くのかどうかは断言できない。そこで、ヨシの出芽以前での枯死茎の刈取りを、生長期のHICによるROL量を増加させる有効な湿地管理法として提案した。 4.ダルシー・ワイズバッハの水頭損失形式を用いて、ヨシの通気抵抗を評価した。通気抵抗は茎内空洞と節隔壁に分けて考えた。茎内空洞においても節隔壁においても損失係数はレイノルズ数に逆比例する形となった。 5.損失が速度に比例する形で損失係数を再定義し、構築した数学モデルを整理し直した結果、ダルシー型の関係を得た。既往研究では、その全てで通気量の評価にダルシー則が用いられるが、本研究により、ヨシの通気にダルシー則が適用可能なことが検証された。 6.ヨシ茎内部は粗度に富み、節に区切られた複雑な形状をしているため、流れが層流であるという前提でダルシー則を適用するのではなく、結果としてダルシー型の式が利用可能と言う方が適当である。
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