本研究は、セメントの硬化過程におけるひび割れの発生過程を正確に捉え、発生しやすい構造、構成化合物の組成がどのようなものであるかを明らかにし、ひび割れの発生しにくい構造、構成化合物の組成を明らかにし、さらにひび割れが発生した際のその硬化体の物質透過性についてモデル化を行い、その耐久性予測を行うことが目的である。本年度は初年度であり、セメントの構成化合物量の精密化およびセメントペーストの強度に及ぼす空隙の影響について検討を行った。現在までに得られている成果は以下の通りである。 (1)普通、低熱、早強ボルトランドセメントの粉体から、それに含まれている構成化合物量の測定を行う手法を開発した。その手法は、反射電子像とエネルギー分散型X線分析により得られた元素分布像を組み合わせて解析することにより、エーライト、ビーライト、アルミネート及びフェライト相の分布及びそれらの量を明らかにするものである。その手法を用いた結果、以前から指摘されているようにボーグ式と異なる傾向を示し、本手法により直接的にセメントの構成化合物量の測定が可能であることが示された。 (2)(1)で提案した手法を用いて硬化セメントペーストを測定及び解析をした結果、強度発現には画像解析で測定可能な粗大な空隙が大きく影響を及ぼしていることを明らかにした。さらに未水和セメント粒子から水和反応率を測定することを可能とし、硬化セメントペースト中の水酸化カルシウム量、CSH量、空隙量、未水和セメント量を定量的に表すことを可能とした。
|