研究概要 |
材料の全空隙量は内包する水分量を定めるための基本的な情報であり,飽和含水量や比表面積と直結した関係にあるといえる。空隙量と比表面積の測定には様々な手法があるが,その代表的な方法の一つに水銀圧入試験が挙げられる。水銀圧入試験では圧入された水銀の浸入量を空隙量として評価するが機器能力に応じた最大の圧入圧力に依存して材料空隙への水銀浸入量が定まってしまうため,得られた結果が直ちに真の空隙量を正確に評価しているとは言い難く,また,飽和含水量から求めた全空隙量との相関についても未検討な部分が多い。そこで,本年度の研究では水銀圧入試験の最大圧入圧力400MPaでの水銀浸入量と水分の飽和状態との関係を検討するとともに,飽和吸着により空隙が水分で満たされる過程を理論吸着等温関係に基づいて明確にした。また,各種の方法で求められた比表面積と空隙量の関係から水銀圧入プロセスが見かけ上,完全圧入のプロセスとして取り扱うことのできる可能性を示した。実験に際して試料は各実験ともに20℃の水中養生を28日,および400日施した普通ボルトランドセメントにより作製した水セメント比30,40,50,60%の硬化セメントペーストを用いた。水銀圧入試験では圧入圧力400MPaまでの圧入とし,水蒸気吸着試験では容量法による実験を実施した。なお,水銀圧入試験ならびに水蒸気吸着試験では各試験共に105℃の炉内に24時間設置して乾燥を施した同一試料を用い,試料の粉砕レベルについても同じく0.4mmのふるいをとおり0.28mmふるいに残ったものを使用した。熱重量分析では飽和状態の試料を対象に毎分5℃の一定温度上昇条件下での質量減少を計測した。
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