研究概要 |
水銀圧入試験を対象とした研究においては,圧入により水銀が空隙に浸入する場を表現する一般的な熱力学的つりあい式と,場固有の微細構造特性を定める数理モデルを連成させることにより,水銀の圧入過程の基本的傾向を表現することが可能な基礎式の定式化を行った.この基礎式は,各種セメント系材料に対する水銀圧入過程の基本的傾向を表現することが可能であり,特に,メソポア領域では極めて良好な精度で試験結果と対応する.この研究により,セメント系材料を対象とした水銀圧入試験における圧入圧力と水銀浸入量の関係と空隙径の分布特性を定量的に関連づけることができた.ガス吸着試験に着目した研究では,上記の水銀圧入試験を対象に構築された基礎式に基づいて定められる空隙径分布関数を反映した新たな理論吸着等温関係式の定式化を行った.この理論吸着等温関係式は,従来のBET理論のように飽和蒸気圧において発散する形式ではなく,湿度の全範囲で閉じた形式として定式化されており,窒素吸着,水蒸気吸着ともにセメント系材料の吸着等温関係を良好に表現することができる.これらの研究により,水銀圧入試験とガス吸着試験に対して,空隙径の分布特性に基づく相互換算を可能とした理論の枠組みが整備できた.また,熱重量分析については,温度上昇にともなうエネルギー変化と水分脱水過程との関係を実験的に明確にし,水分の脱水過程が微細構造特性を反映した結果であることを確認した.
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