研究課題
溶接接合部における脆性破壊の発生は欠陥寸法・部位・形状に大きく依存し、超音波探傷検査では許容される微小欠陥から脆性破壊が発生した事例も報告されている。従って、不可避的に存在する溶接欠陥が接合部の性能に及ぼす影響を定量的に評価する必要があり、それにより欠陥の合否基準を定めることが本研究の最終目的である。欠陥形状が表面亀裂である場合、亀裂先端の塑性拘束は弱く、延性亀裂が大きく進展した後に脆性破壊に到る。そこで表面欠陥から進展した延性亀裂を起因とする脆性破壊について、欠陥形状・寸法と塑性拘束の影響を調べるために、通しダイアフラム形式柱梁接合部を単純化した試験体を用いて破壊の再現を試みた。ダイアフラムに梁フランジ端部を突合せ溶接した後、梁のウェブに相当する位置にリブプレートを溶接した試験体を支持ブロックに固定し、梁ウェブ端部に繰返し荷重を載荷した。試験体のパラメータは欠陥形状とし、溶接時に内部欠陥を意図的に作成した。実験温度は、シャルピー衝撃試験から得られた破壊靱性値が47J程度となる温度として-20℃とした。実験と同時にFEモデルを用いて数値解析を行い、欠陥先端のJ積分値と応力三軸度の関係を検討し、塑性拘束の影響を考慮した改良破壊評価線図(FAD)手法を用いて破壊評価を行った。その結果、ルート部に存在する欠陥端部のJ積分値の増分と塑性拘束は低く、改良FADによる破壊評価では脆性破壊の発生の可能性が低いことがわかった。また、FE解析結果で応力集中が見られた溶接止端部も、実験においては延性亀裂の進展量が小さく、同程度の延性亀裂を挿入したFEモデルによる破壊評価においても脆性破壊は発生しない結果となった。以上のことから、今後は欠陥寸法をパラメータとして、機械切欠き及び疲労亀裂による亀裂先端が鋭角な表面欠陥を挿入し、延性亀裂の安定成長から不安定成長への移行について検討する。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Welding in the World Vol. 50, Issue 5/6(掲載確定)
Proceedings, 10th International Symposium on Tubular Structures (発表予定)