本年度は以下の研究を実施した。 (1)熱ストレス測定カートの製作: 放射、対流による不均一性・非定常性の強い熱ストレスの測定カートを製作した。このカートは、高さ方向別の風速、温湿度分布、周辺から人体へ入射する方向別の日射・長波放射量分布の測定が可能である。現在、このカートの性能チェックを行なっている。 (2)新しい屋外温熱環境分析ツールの開発: 屋外温熱環境CFD解析と多分割人体温熱生理モデルを連成させた新たな屋外温熱環境分析ツールの開発を進めている。今年度は特に以下の点について検討を行った。 (a)多分割人体温熱生理モデルの性能比較と新モデルの開発 屋外温熱環境CFD解析と連成する人体温熱生理モデルの精緻さの異なる解析により、多分割人体温熱生理モデルの導入効果を分析した。その結果、(1)人体温熱生理モデルの精緻さの差異により日射による熱ストレスが人体の温熱快適性に関わる諸量の推移に差異が生ずること、(2)Smith Modelに対するAVA血管反応の導入により暑熱下での皮膚温度分布の予測精度が向上し、熱ストレスに対する人体の部位と面毎の温度差を捉えることができたこと、が明らかとなった。これらの知見に基づき、現在、人体へ入射する放射の不均一性の評価を可能とする新モデルの開発を進めている。 (b)着衣内における熱・水分移動モデルの精緻化 現在開発中の人体温熱生理モデルのサブモデルとして組み込む着衣の熱・水分移動に関するモデル化について検討した。ここでは、着衣内の定常的な熱・水分移動を考慮したモデル化(従来型)と非定常移動を考慮したモデル化の、各々を人体温熱生理モデルに組み込んだ場合の結果を比較した。熱ストレスの大きな屋外日照部の気象条件を対象とする場合、人体からの発汗に伴う熱・水分移動とこれに伴う着衣内水分の増加の考慮の有無が、二つのモデルの結果に大きく影響を及ぼすことが確認された。
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