研究概要 |
バスルームやシンクにおいて,排水時に発生する突発的な音が居住環境を悪化させている.この音は水中に存在する気泡の振動によって発生すること,音源である気泡は水流が水面に衝突する際に空気を水中に巻き込むことで生成されることが知られでいる.水流の衝突によって生成される気泡の数や大きさは水流の乱れ強さによって変化するため,そこから発生する音の周波数や音圧レベルは流れの状態によって大きく変わる.本年度は水流の乱れ強さを定量的に規定し,気泡生成のメカニズムを明らかにすることを試みた. 排水管の流れにおいて,気泡の生成と音の発生に関わる要素のみを取り出した流れ場として,水槽内の静止した水面に厚さ3mmの水膜流が衝突する流れを取り上げた.気泡は水膜流が静止水面に衝突する位置から水中に巻き込まれる.測定孔が100ミクロンの全圧管を用いて水膜流の速度分布を測定し,生成された気泡体積との関係について調べた.水膜流の表面速度の7乗に比例して,生成される気泡の体積が増加することを明らかにした.このことから,気泡の生成量は水膜流の表面の状態によって整理できると考えられる.そこで、水膜流の水面形状の時間数的変動と気泡生成との関係について調べた.実験結果を系統的に整理するため,振動子を用いて水膜流に周期的な人工撹乱を与え,撹乱の強さと周波数を変化させたときに生成される気泡の体積を測定した.水面形状の変動はレーザー光とフォトダイオードアレイを用いた測定装置によって求めた.水膜流の平均流速が等しい場合でも,与える撹乱の強さによって気泡生成量が変化すること,周波数によっては気泡が全く取り込まれない場合があることを明らかにした.このことは水流の乱れの状態を制御することによって,音源となる気泡の生成を抑制できる可能性を示唆するものである.
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