1、背景 近年、我が国においても自然条件に従って土地利用のあり方を考えることの重要性が指摘されており「環境共生型土地利用」等の言葉で一般にも知られつつある。しかし、この「環境共生」には「自然災害の軽減」「熱環境の緩和」「生態系の保全」など様々な視点が含まれるため、これを実現するためには都市環境に関わる複数分野からの土地利用に対する提言を統合し、それらを1つの計画としてまとめる必要がある。従来の土地利用計画の現場においてこのような作業を計画担当者のみで行うことは困難で、このことが「環境共生型土地利用計画」を阻害してきた一因であると考えられる。 2、研究の目的 以上のような背景から、本研究では上で挙げたような都市環境に関わる複数分野からの土地利用に対する提言(エキスパート情報)を分かりやすく計画主体(住民、計画担当者)に提示するための「環境ゾーニング地図集」の作成手法を確立することを第1の目的とし、その「環境ゾーニング地図集」を現実の住民参加まちづくりの現場で利用し、その有効性を検証することを第2の目的としている。なお、この「環境ゾーニング地図集」は各分野(地盤工学、水環境学、都市気候学、生態学等)からの土地利用計画への提言を地図上にわかりやすく表現した地図集である。 3、研究実績 昨年度までに、前述の第1の目的(「環境ゾーニング地図集」の作成手法の確立)を実現するべく、地盤工学、都市気候学、水環境学、生態学からの「環境ゾーニング地図集」を作成した。これを受けて本年度は、これらの地図を用いた多主体参加型まちづくりワークショップ(シャレット)を神戸市で実践し、「環境ゾーニング地図集」およびそれを利用したまちづくり手法の検証・課題抽出を行った。その結果、「環境ゾーニング地図集」は都市環境関連専門分野の知見を市民・プランナーといった人々に分かりやすく伝えるために有効であることが認められた。また、本研究より「人口減少社会における自然再生戦略策定支援」という役割がこの「環境ゾーニング地図集」には担いうるということが認識され、この点を意識したものへと改良することが今後の課題である。
|