無彩色背景有彩色文書を視対象として文字色を種々に設定して文書の読みやすさを評価させる主観評価実験を実施した。 被験者は色覚正常2名、第二色覚異常2名を対象とし、被験者の色覚はアノマロスコープにて判定した。 視対象を提示する装置として、調光可能D65光源を内蔵する内面白色仕上げの視野の明るさを調節可能なBOXを作成し、観察口の対面の視標提示用開口に液晶モニターを設置し、種々の有彩色文書を表示する装置を作成した。モニターに表示する文書の背景と、BOX内面の輝度と色度を合わせることで、均一な背景の中に有彩色文字を提示可能となった。 背景輝度、文字と背景の輝度対比、文字の大きさ、文字の色度を変量として種々の条件を設定している。本実験では特に色覚に着目していることから、文字の色度は、同一の混同色線(第一色覚異常と第二色覚異常)上の組み合わせになるように設定した。 実験条件は全てで270条件となり、各被験者同一条件について5回の評価を得た。 各実験変量と読みやすさ評価との関係とともに、各実験変量と実験結果から算定される等価輝度対比との関係を検討した。色覚特性に関わらず、 ・背景輝度、文字の視角により読みやすさには差異が見られるものの、等価輝度対比に大きな差異はみられない。 ・輝度対比が大きいほど等価輝度対比が大きく、LAB色空間で同彩度Cabであっても色相によって読みやすさ及び等価輝度対比に差異が見られる。 など、既往研究と同様の結果が得られた。 彩度Cabが等しく同一混同色線上にある色であっても、読みやすさや等価輝度対比に差が見られることがわかり、それらの傾向に色覚特性の違いは特には見られなかった。色覚異常であっても白色背景に対する色弁別感度が高いことが原因と考えられるが、逆に、背景が白色の場合には色覚特性に関わらず明視性を一元化して取り扱うことが可能なことが示唆される結果となった。
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