音の長距離伝搬に対する気象の影響について、本年度は主に風の影響について検討を行った。 (1)屋外における音の長距離伝搬予測プログラムの開発(MPI利用による並列システムへの適用) 今年度購入したクラスタPCシステム用に音の長距離伝搬解析プログラムを作成した。既存のPCに比べ、現有システムでは約8倍の空間に対する解析が可能となり、2次元音場に限れば、屋外における長距離伝搬について実用上必要となる範囲内が解析可能となった。また、プログラムに汎用性をもたせ、大規模なクラスタシステムへの適用を可能にしたことで、解析対象空間に応じてシステムを追加することで、より大空間の解析が理論上可能となっている。 (2)複雑な形状の音場における気象影響を考慮した音の長距離伝搬に関する解析手法の開発 複雑な音場を解析可能なFDTD法と気象影響を考慮して音の長距離伝搬が解析可能なPE法の2種類の数値解析手法を組み合わせた新たな解析手法を提案した。 (3)新たな数値解析手法の基本的性能の検証 日本建築学会・音響数値解析小委員会主催のベンチマークプログラムを利用し、(2)において開発した解析手法の基本的な精度について検証を行った。 (4)屋外における音の長距離伝搬に関するフィールド実験 北海道大樹町航空公園においてフィールド実験を行い、コンクリート舗装面上および草地上における音の長距離伝搬について、風の影響による伝搬量の変化を詳細に検討した。 (5)風の影響による音響伝搬量の変化に関する予測手法の提案 数値解析結果をもとに、音の長距離伝搬における風の影響による伝搬量の変化を予測する手法を提案し、(4)における実測結果と比較検証した。コンクリート舗装面上の伝搬については予測値は実測値と概ね良い対応が見られた。また、草地上の伝搬についても100m程度までの音の伝搬については概ね良い対応が見られた。
|