本年度は、国内外の建築や都市の公共空間に関するパブリックアクセスの問題を把握するために、我が国のPFIの手本となったイギリスにおける先駆的手法、およびユニバーサルデザイン概念の発祥国であるアメリカでの官民協働型プロジェクトを中心に情報収集を行った。 PFIによる建築・都市空間デザインの先駆的都市であるロンドンでは、Tramlinkを中心に駅空間における異種交通機関の接続システムに注目し、そこでの利用者の移動の連続性を調査し、ユニバーサルデザインの観点から現在の公共空間整備の課題を把握してきた。アメリカでは、最も早くから都市計画に関する州政府の権限が移された地方自治体の一つであるウィスコンシン州マディソン市に注目し、そこで実施されている開発評価プロセスと住民参加システムについてインタビュー調査と資料収集を行ってきた。 あらゆるプロジェクトには、直接的・間接的な関係者の間で何らかの利害衝突が生じる可能性を潜在的にもっている。特に民間のノウハウや資金等を活用するPFIでは、その調整が大きな課題の一つである。PFI先進国での参加・計画システムは、事業者が具体的な計画の内容を詰めてからそれを社会へ公表するよりも、計画構想の段階から住民やその他の利害関係者と接触し評価を得る、つまりデザインプロセスにおけるパブリックアクセスを高める方が、最終的には利害関係者間のより良い相互理解へと繋がり、事業全体の経済的・時間的・生産的なコストの削減に繋がるという思想に基づいて構築されていることが明らかとなった。 来年度は、より積極的にボトムアップ型の参加・計画システムを我が国において整備するうえでの具体的な目標と方法を探るべく研究に取り組む。
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