20世紀の大都市では、大規模の土地利用転換や開発によって高度かつ巨大な都市構造物の集積体とした拡張型の都市構造が形成されてきた。しかし、近年、従来の都市構造から人口減少、都市の成熟化、経済社会文化的な変動や環境の制約などに対応できる持続可能な循環型社会への変換が求められている。その要因の一つは、従来の開発需要に対応した都市政策が歴史・文化・地域性の継承とともに、快適な都市空間の持続的な再形成に対する社会的要請に応えることが困難になったからである。 このような社会的変化を受け、近年、日本では2002年の都市再生特別措置法に伴って政府のみならず、民間活力を積極的に活用した都市再生政策が推進されている。特に東京日本橋の首都高速道路の将来構想や、大坂東横堀川・道頓堀の親水化構想等のような周辺既成市街地と調和しつつ、自然環境との調和・共生するための都市再生の事例も見られる。質的に高度かつ多様な変化への対応が求められる反面、これからの都市再生や社会資本による整備・管理には、住民・NPO・企業等の積極的な理解や参加・協力が得られる政策手法が課題とされている。 上記のような課題認識に立ち、本研究では自然環境の復元を通して新たな都市再生を展開している韓国ソウル市「清渓川復元事業」を事例に、1)事業展開における各主体別の焦点及び要因分析、2)合意形成の戦略や取り組みについて明らかにした。 その結果、次のように3つの側面から成果が得られた。 1)推進体制的側面:明確な役割機能を持つ組織を構成し、相互有機的なガバナンス体制の構築 2)政策決定的側面:利害関係者に対し、信頼関係構築のために組織的方法と非公式的方法による合意形成 3)計画情報的側面:事前に事業推進において予想される対立主体を抽出し、差別化した広報戦略の展開 上述した一連の成果は、日本建築学会関東支部研究報告会において研究発表「都市再生における合意形成戦略に関する研究-ソウル市「清渓川復元事業」を事例に(2007年3月)」を行った。
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