本年度行った研究の内容は以下の通りである。下記の分析に用いた資料、及び先行研究の入手に当たっては、各図書館資料や補助金にて購入した古書類を使用した。 (1)都市計画関係者による「都市計画・まちづくり」の啓発・教育活動の内容分析 石川栄耀による都市計画に関する市民・子供向けの読本・絵本・映画・雑誌記事といった制作物の収集を行い、文献資料の前書きや制作時期前後の制作者の寄稿記事(『都市創作』『郷土教育』等の)から、どのような意図・目的を持って、誰を対象に制作されたのかを分析した。また、制作物で記された・描かれた内容は、都市計画のどのような分野・テーマ・トピックであったのか、またそれぞれに記されたメッセージはどのようなものかを整理し、都市計画関係者が市民・子どもに啓発・教育したいと考えた項目を大きく3つのパターンに分類した。また、都市計画関係者による過去の啓発・教育活動は、担い手及び媒体の種類、メッセージの変化から、(1)郷土教育期、(2)終戦直後民主都市建設期、(3)高度経済空白期、(4)外発的市民運動発展期、(5)住民参加まちづくり期、の大きく5期に時代区分された。 (2)学校教育における「都市計画・まちづくり」の教育活動の内容分析 終戦直後の文部省著作社会科教科書、戦後発行された社会科等の副読本、児童向け図書等の制作物から「都市計画・まちづくり」について記されたものを収集し、(1)と同様に内容の分析を行った。その結果、終戦直後の多彩な分野に渡る教育内容の模索期、及び高度経済成長以降の学習指導要領準拠期に大きく区分され、終戦直後の多彩な成果が現在ではほとんど見られないと言える。 (3)初年度のとりまとめ 特に(1)を中心とする内容のとりまとめとして、日本都市計画学会大会発表へ投稿するための作業を進めている。
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