今年度は、本課題研究の骨子となるアンケート調査、及び行動観察調査による空間の質の検証を宮城県においておこなった。次年度以降本格的に全国を対象に実施していくための準備として位置づけられる。 まず、アンケートの作成に当たっては、グループホームを含めた高齢者施設を多数手掛けている設計者にインタビューを行い要点を整理した。その結果として、「居室ゾーン」と「共用空間ゾーン」の視覚、聴覚的連続性の有無など空間構成に関する項目を加えて調査をおこなった。 アンケート調査は宮城県グループ協会の協力を得て、会員ホーム(70カ所)に送付した。回収率は35.7%(うち、平面図が添付されていないアンケートもあり、有効回答率は27.1%)である。平面図が添付されていた19ホーム(30ユニット)の平面構成は、概ね「ロ」字型、「コ」字型、「L」字型、中廊下型、片廊下型に分類することができた。また、片廊下型では3つの応用型もみられた。もっとも多く見られたのは「ロ」字型(36.8%)プランで、次いで「片廊下型」(18.4%)(応用1型が2、応用2型が1、応用3型が4ホーム)である。中廊下型と「コ」字型は各6ホーム(15.8%)、「L」字型は5ホーム(13.2%)である。現在は上記の結果に基づき、アンケート調査の完成度を高めるための項目の修正を進めている。 行動観察調査による空間の質に関する検証については、宮城県内にある施設を対象としておこなった。入居者を男女別でユニット分けしており、空間的視点に加えてジェンダー的視点も加えて分析をおこなった。ジェンダー的な視点からは、女性のみのユニットと男性中心のユニットにおける入居者同士、入居者とスタッフとのかかわり方の相違などを通して、認知症高齢者グループホームにおける男女別のグループ構成のあり方を考察した。空間的には共用空間と居室ゾーンの連続性が欠けていることが、入居者の生活構成に大きな影響を与えていることが検証された。入居者とスタッフの滞在空間の連続性を保つことの重要性や、性差による共用空間に求めるニーズの違いも見いだされた。 今年度の研究結果に基づいて、来年度より全国的に調査を進めていく予定である。
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