地域主権時代におけるローカル・ガバナンスの具現化と、地球規模でのサスティナビリティを保障する政策論として、地域の自然資源を共通社会資本と見なした管理制度(共有財化)に対する関心が高まっている。初年度は、その現象を整理するため、英国スコットランド及びイングランド、北米のいくつかの事例を検証した。 その中でも、スコットランドの高地島嶼地域の取り組みが先進的であった。土地所有・利用に関して特有のシステムを有するこの地域では、不在地主が地域経済を無視した土地利用(外部労働者らによる林業等)や土地放棄による環境悪化を引き起こすなど、近隣コミュニティの社会経済活動を阻害してきたことが大きな問題であった。このような状況を打破する政策として、2003年には土地改革(スコットランド)法が設立された。この法律は、土地およびそれに付随する資産の所有権をコミュニティに移転することを推進するものである。具体的には土地所有者が土地売却を検討した際、その土地に関心のあるコミュニティ(法人登録が必要)からの事前登録があれば、市場での売買において土地取得の優先権が与えられるというものである。土地の取得は市場価格とされているが、スコットランド政府はコミュニティによる土地所有を推進するために、2億円の公的予算を準備した。実態としては、私有地を国が買い上げ、コミュニティに無償譲渡する仕組みである。 このような土地改革を進める背景には、土地利用管理のサスティナビリティに関する意識の高まりがある。また、条件不利地域コミュニティの社会経済活動基盤として、共有の不動産があることの有利性、またその共同管理システムの構築プロセスにおけるソーシャルキャピタル増強が計画システムとして意図されている。
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