本研究は、オランダ領東インドにおける都市計画の源流を明らかにすることを目的としている。対象はジャカルタとスラバヤという2大都市として、主に次の視点から調査研究を遂行した。 1.植民地時代の都市計画関連地図の所在確認とその内容 ジャカルタでは都市計画局内の測量部門、スラバヤでは同じく都市計画局内のモニタリング部門に植民地時代の関連地図が保管されていることが現地調査によって判明した。尺度は1/500〜1/1000で、統一都市計画法施行後のディテールプランに当たる。ただし前者は、随時書き換えられた地形図のようなもので、実施された計画のみが記載されている。 2.スラバヤ市における居住環境改善事業と都市計画の関係 (1)20世紀前半の居住環境整備事業の法令と都市計画法令の比較 両者の法令案の比較によって、居住環境整備事業の実践が、同時代の都市計画法の中心課題のひとつであった。急速な都市発展の中で、劣悪な居住地を道路拡張・開発、上水・排水整備によって改善することが都市計画的にも急務であったことを明らかにした。 (2)スラバヤ市におけるフィールドサーベイ 実際に都市計画法に定められたディテールプランの実施を行った居住地について、その実施内容を現地調査と聞き取りによって明らかにした。道路整備の際に、排水用側溝が設けられたが、道路両側排水溝の場合、住宅が接道するラインとして現在まで機能してきたのに対し、道路中央排水溝の場合に特に独立後、道路幅員の減少を招いたことを明らかにした。 3.以上に加えて、旧オランダ領植民地の都市計画形成に大きく影響を与えたシモン・ステヴィンの『宿営地建設』についてその概要を文献研究によって明らかにした。
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