本研究は、より安全で快適に、地域的特色を有しながら木造住宅の長期耐用化を実現するため、居住者や地域住民が、既存木造住宅ストックの歴史や文化、意匠、木造の技や知恵を再発見、再認識するための手段を探るものである。特に現在幾つかの都市で地域の文化財資源を発見し、それらを保存・保全・管理する取り組み「ヘリテージ・マネージメント」、「ヘリテージ・マネージャー」という考え方に着目し、そこでの手法を積極的に既存の地域型木造建物の維持管理・継承に役立てるための手法の開発を目指している。 今年度は、木造住宅、民家・町家の再生計画・設計、文化財保護などに関する既存研究および文献、また統計資料をレビューするとともに、広島県賀茂台地を中心に民家、町家、在来木造住宅の抽出するため、東広島市黒瀬町を調査対象地域として、この地域独特の民家である居蔵造り住宅に着目し、既往研究を参考に屋根形状や2階の階高・用途などから建物形態について3つの形式に分類した上で、2005年11〜12月にかけて外観目視による建物マッピング調査を行い、1192件の居蔵造り住宅を確認・抽出した。さらに、これらの調査対象住宅から無作為に抽出した40件について空中写真分析による過去40年間の建物変容を明らかにするとともに、うち17件の居住者に対して、住宅様式・形式に係る言葉の認知と認識、住宅の安全性・快適性・伝統に対する意識などについて把握するための直接訪問によるヒアリング調査を行った。
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