ベトナム・ハノイにおいて、竣工したばかりのタワー型の高層集合住宅で住まい方調査を行った。その結果、以下の様な事項を確認することができた。(1)住戸の大型化、(2)私室の確立、(3)水廻りの充実、(4)公室の肥大化、(5)方位へのこだわりの少なさ、(6)インテリアデザインの充実、(7)居住階へのこだわりの差異、(8)共用空間の貧弱化、などである。 玄関から居間へ直接入り、居間を通って私室へアプローチする平面構成はベトナム伝統的住居の平面構成と類似している。また、公室が大きな面積を占めるのも共通している。しかし、調査した集合住宅においては、公室が生活行為に対し大きすぎる傾向が見られ、居住者自身によるインテリアの改造や家具の設えにより公室を2つの領域(居間と食堂)に区分けする事例が多く見られた。 また、伝統的住居の私室で行われる行為はほぼ就寝に限られるのに対して、調査した集合住宅においては、家事、勉強、仕事など多くの生活行為が私室で行われることも大きな違いと言える。 さらには、調査対象の集合住宅においては、伝統的住居で見られる玄関前の軒下空間にあたる、住戸内外の緩衝領域がまったく存在せず、公私の生活行為の調整や良好なコミュニティの醸成に問題が出てくることも考えられる。 現地共同研究者とのこれまでの研究成果の検討の中で、現在急速に建替えが進む、1960年代から70年代にかけて建設された集合住宅の従前・従後の比較調査が必要なことが指摘された。 既往研究の概要をまとめたデータベース作成については、そのひな形を構築し、ローカルなネットワーク環境での動作を確認する作業を開始した。今後、データ量の充実と公開に向けて作業を進める。
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