本研究は、直交する壁や床で形成されない建築部位を非整形形態と定義し、それらの形態の現代の建築空間における使用法、形態の生成論理を明らかにするものである。 平成18年度は、以下の3点についての分析を行った。 (1)設計者の言説に見る、建築設計の中での形態の生成論理の形式的分析 建築設計の中に占める形の生成過程の役割について理解を深めた。建築設計における問題発見・解決のプロセスの中で、既存の知見に基づく外在的な要因による解の設定から建築の形態が導かれ、それが検証されることで採用される場合と比較して、非整形な形態や複雑な形態においては、形態をつくることが論理的に先行し、意味の付与が事後的に行われることが考えられる。さらに、非整形な形態を実現するために、現実的な建築としての合理性についての検証を繰り返すことで形態を更新していくプロセスにも、形態自体を更新していく場合と、生成の論理すらも変更していく場合とが有りうることが導かれた。 (2)類似的な図形の使用法についての分析 形態要素は単純でありながら複雑な様相を呈している建築の構成に着目し、非整形形態が生み出す複雑さとの比較対象として、類似的な図形を反復して用いている建築の構成について既存の建築物の平面を対象として分析を行った。そこから、図形の種類、プロポーション、大きさ、角度などについてそれぞれの量だけでなく、偏差を操作することで、多様な構成を生み出す可能性が有ることを見いだした。 (3)非整形な平面形状・3次元形状についての心理評価とその評価構造 非整形な平面図形について、形容詞による心理的評価の構造について考察を行った結果、非整形や整形が混在した複雑な平面形状が、形容詞による評価によって類別可能なことがわかったが、3次元形状について縮尺の差異等により、使用法について確定することが難しいことがわかった。そこで、1/10の居室を見立てた限定的な模型空間を用意し、間仕切の形状を操作することで、その形状をどのように理解するかについて実験を行い、現在、分析を行っている。
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