研究概要 |
今年度は,阪神・淡路大震災事例をもとに公的な住宅供給施策である仮設住宅と公営住宅の新規立地が都市全体に及ぼした影響について,震災前後の国勢調査メッシュデータを用いて分析した。その結果,遠隔地の仮設住宅供給・公営住宅供給によって小規模な人口移動を促進し都心部の人口高密状況の改善の役割を果たした点,公的住宅が供給されたエリアでは時系列の居住者構成の変化が著しく地域性の変化に影響を及ぼしたことが考察される点,公的住宅供給がエリア毎の居住層の特徴を鋭敏化した点が見いだせた。また,公的住宅供給は第一義的には基礎自治体で量的均衡を保つため,住宅移動域も市町村境界が非常に強い影響力を持つ。その結果として阪神、淡路大震災の激甚被災地域の各市町の公的住宅供給モデルを構築し,新潟中越地震・宮城県北部地震の被災地域とのモデルとの比較を行い,一般的な住宅供給タイプを組み立てることができた。 また阪神エリア全体の住宅再建困難層の公営住宅供給方法と,トルコ地震時の住宅供給方法,およびメキシコ地震時の住宅供給方法の地理的供給手法の比較を行い,定性的な面だけでなく定量的な面で,相違点・類似点をまとめた。 分析の結果から考察される点として,(1)住宅供給タイプは被害量と従前の空間土地利用状況によって決定することから,被害量を決定すれば事前にどのような住宅供給タイプになるかがある程度予想できる,(2)住宅供給タイプと入居者選定,入居後の住宅流動性が,立地した地域の特性に影響を及ぼす,(3)住宅供給タイプは災害後の都市変容の大きな要素となる,ことが示された。
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