本研究は、建築家・池辺陽(1920〜1979)が自宅にい遺した設計図面のマイクロフィルムを用い、設計図面に記された設計寸法を詳細に検討につつ、それらに池辺が考案した独特の寸法体系「GMモジュール」がどのように用いられたかを検討することで、そこに示された池辺の建築観について明らかにするものである。 池辺作品の設計図面(約一万点)は、生前の池辺の指示によってすべてマイクロフィルムに撮影され、現在は池辺家に所蔵されている。本研究では、資料保存の立場から、将来的に劣化が懸念されるマイクロフィルムをデータ化するとことも同時に行う。まず今年度は、フィルムをデータ化して閲覧可能な状態にするとともに、そのリスト化(データベース化)の作業を行った。 具体的には、本年度の作業として以下のことを行い、終了した。 1.資料のデジタル化とその補正 ・昨年・一昨年と行ったマイクロフィルムのデジタル化が今年度終了した。試行錯誤を繰り返した原因を検討し、資料撮影された時期がマイクロフィルムのJIS規格制定以前だったためであったことなどを突き止めた。 ・以上の反省をふまえ、新たに発見された池辺作品のマイクロフィルム(鹿児島宇宙空間観測所:499枚)については、スキャナーではなく高精度のデジタルカメラを用いてデジタル化を行った。その結果、スキャナーよりもはるかに精度の高い画像にすることができた(ほぼ同価格)。 2.池辺作品の実地見学 ・池辺が設計した鹿児島宇宙空間観測所(現・内之浦宇宙空間観測所)の諸施設が現存・活用されていることを確認し、現地見学を行った。 住宅作品の現存状況を調査した。 3.図面資料の分析 ・住宅図面を用い、池辺の住宅作品を「施主の職業」「所在地」「材料」「構造形式」などの点に注目して分析・考察を行った。これらの傾向と設計寸法の用い方の関係について検討した。
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