研究概要 |
本年度の研究作業は大きく2つに整理できる。 (1)これまで収集してきた大阪・阪神間の都市部およびその周辺の造園業ならびに住宅地開発関係史料(地図・文書・ヒヤリング)の整理・分析 (2)京都市,宝塚市,岡山県の造園業・果樹園芸業と住宅地開発関係史料の発掘と収集 (1)の成果としては,対象地域について明治20年前後に陸地測量部によって実測された「仮製2500分1地形図」を基本地図として,明治後期,大正期,昭和初期の地図資料を重ね合わせることで,明治から昭和戦前期までの都市郊外の空間構造変化,土地利用変化を経年的にプロットした。そこから造園業,果樹園芸といった近代に隆盛した産業が,都市周縁・郊外において土地利用や景観の変容を牽引する役割を果たしていたことを空間的に把握することができた。また,文献史料を整理することで,造園業者や果樹園芸業者が土地開発をどのように進めていたのか,それらが後に住宅地開発と結びついていく過程と背景を探った。 (2)については,京都市と宝塚市の造園業,岡山県の果樹園芸業の業者組合へアプローチすることで,近代から地域開発に関わっていた業者を拾い出し,史料調査やヒヤリング調査を行った。特に宝塚市に位置する平井・山本地区では,阪神間の郊外住宅地開発とともに発展してきた業者が多く現存し,そこから得られた情報は造園業と郊外開発のメカニズムを解明する有益な手がかりとなった。また,岡山県についても桃・ぶどう栽培が近代以降の郊外の土地利用を大きく変えていく過程を把握することができた。それらの地域の住宅地開発に関わる資料として,土地会社や電鉄会社が所蔵する開発経緯が記載された経理報告書や事業報告書を年代順に整理し,経営の経緯を追い明らかにした。これらの作業と並行して,関連雑誌・論文・新聞資料などの収集も行った。
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