本研究は、ジャワ島に残されたヒンドゥー・仏教の寺院建築遺構について、文献的研究と並行して、それらの遺構を実測し、そこで得られた寸法データを基に、中部ジャワ時代(7〜10世紀)の建築の造営に用いられたと推測されるモノサシの長さ、造営尺度を復原的に抽出し、併せて寸法計画の分析を通じて、設計の手順の解読を行うことを目的とするものである。 3ヶ年の研究期間内に対象とする、安山石ないし煉瓦による積組造の遺跡は、(1)ジャワ最初期のものとされる中部ジャワ北部山間地のディエン高原およびグドン・ソンゴのヒンドゥー教の遺構群、(2)中部ジャワ南部のヒンドゥー教、仏教の遺構群、(3)東部ジャワに存在する中部ジャワ時代の遺構の各建物および伽藍全域である。 平成17年度は、冬期(12/20〜1/8)・春期(2/18〜3/13)の2度に分けて現地調査を実施した。 実測を行った遺構は下記の通りである。 ディエン高原:チャンディ・アルジュノ、チャンディ・スマール、チャンディ・プントデウォ、チャンディ・スンボドロ、チャンディ・ビモ、チャンディ・ドワラワティ、チャンディ・ガトコチョ、チャンディ・スティヤキ、グドン・ソンゴの遺構群:コンプレックスI〜V、チャンディ・グバン 以上の遺構群は、建築様式および細部意匠ともに素朴な古式を残しており、ジャワ最古のものに比定されるヒンドゥー教寺院である。これらの建築の造営尺度について、建築各部の寸法相互の関係を精査した結果、とりわけ重要な長さの基準として想定されるhasta(肘尺)については、370〜400mm程度の値を取る可能性が高いことが検証された。hastaの実長としては幾分短い印象もあるが、今後の中部ジャワ南部の遺跡における調査の結果も見ながら、更なる追究が必要である。 実測調査と併せて、現地関係者へのヒヤリングおよび文献的調査も実施している。
|