本研究では、金属単結晶基板上にL10型規則合金の超薄膜試料の作製を行い、低速電子線回折強度解析(LEED-IV)と軟X線吸収磁気円二色性測定(XMCD)により、構造と磁性の微視的測定を行う。また、実験結果を第一原理計算と比較する。本年度の研究実績は、各項目について以下の通り。 (1)試料作製 L10型規則合金の超薄膜試料作製の準備として、Pd(001)基板の超高真空下における結晶クリーニングを実施して清浄表面を得た。また、RHEED振動をリアルタイムモニタするシステムを開発した。また、標準試料のFe/Cu(100)等に対してRHEED振動実験を実施して、積層厚制御が可能なことを確かめた。 (2)LEED-IV測定 LEED I-Vシステムの開発を行った。高感度冷却CCDカメラを用い、微弱な蛍光であるLEED回折スポットを低ノイズで画像収録し、入射電子線エネルギーに対するLEEDスポット強度を解析できるシステムを開発した。また、Cr/Fe/Cu(100)超薄膜についてLEED-IV測定を実施して、そのCr蒸着量依存性を調べた。Cr/Fe界面の生成により、Fe薄膜の結晶構造が変化することが明らかになった。 (3)XMCD測定 広島大学放射光科学研究センター軟X線ビームラインBL14に、試料作製とXMCD測定をin-situで実施できる新規装置の建設を行った。また、Cr/Fe/Cu(100)超薄膜について温度依存XMCD測定を実施して、そのCr蒸着量依存性を調べた。Cr/Fe界面の生成により、温度磁化曲線が変化することが明らかになった。 (4)第一原理計算 科学技術計算に適したワークステーションを導入し、第一原理計算パッケージWIEN2kが利用できる環境を整備した。
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