Ba-Al-Si三元系クラスレートにおいて、組成比をBa : Al : Si=8:12:32として原料を秤量し、アーク溶融にて合成することにより、組織観察、X線解析、TEM観察の結果、クラスレート単相が得られていることが分かった。性能指数の算出に不可欠である3つの特性(ゼーベック係数、比抵抗、熱伝導度)を測定するための装置の製作を行い、真空下で室温から500℃までの熱電特性の測定が行えるようになった。それらの装置を用いて、合成したBaAlSi三元系クラスレートを測定した結果、500℃において性能指数Zが0.0005K^<-1>(目標:0.001K^<-1>)であった。また、Alを異なる元素に置換した三元系クラスレートの合成にも着手し、Ba-Ag-Si、Ba-Cu-Si、Ba-Ni-Si、Ba-Ga-Siのクラスレート単相を得ることに成功した。さらに不純物を添加した四元系クラスレートの合成にも着手し、Ba-Al-Si-Geクラスレートの単相を得ることに成功した(組成Ba : Al : Si : Ge=8:14:32:1)。しかしながら、Ba-Al-Si-Geクラスレートの熱電特性はBaAlSi三元系クラスレートよりも劣る結果となった。その原因の1つとしてBaAlSi三元系クラスレートより、Alの含有率が大きく、アクセプターとして働くAlが多くなったため、主キャリアである電子のキャリア濃度の低下を招き、比抵抗が大きく増大したためと思われる。また、Siの結晶成長に関する基本的な知見を得るため、計算機を用いて核発生・結晶成長に関するシミュレーションを行った。
|