前年度までの合成元素・組成を探索した結果において比較的良好な特性を示したBa-Al-Siクラスレートを中心に、性能向上を狙った添加元素・熱処理条件の最適化を行った。その結果、アーク溶融後の試料に真空アニールを行うことにより、性能指数の向上が見られることが分かった。また、真空アニール前ではBa : Al : Si:8:12:32の仕込み組成の試料においてのみしか単相試料が得られなかったが、真空アニールを施すことにより、Ba8AlxSi46-xとした場合の12≦x≦18の範囲で単相試料が得られることが分かった。組成比をBa : Al : Si=8:18:28として原料を秤量し、アーク溶融さらに真空アニールを850℃、20時間行うことにより、性能指数Zが0.00103 K^<-1>(目標:0.001 K^<-1>)を持つ試料の作製に成功した。その試料の組織観察、X線解析、TEM観察の結果、クラスレート単相が得られていることも確認した。高い性能指数を持つサンプルが作製できたことにより、計画を前倒しして熱電発電モジュールの試作を行った。5mm×5mm×8mmの素子を15個作製し、それらを直列に接続することでモジュールを作製した。作製した熱電モジュールの下部を加熱するとともに、モジュール上部に送風し冷却することによる発電実験を行った結果、モジュールの下部温度が400℃の場合、上部(低温側)は130℃であり、約270℃の温度差と0.2Vの起電圧が得られた。
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