研究概要 |
本年度は窒化ガリウム(GaN)に添加する希土類元素として,ユーロピウム(Eu)とガドリニウム(Gd)を,それぞれ発光,磁性特性の発現を期待して選定し,合成を試みた。合成法にはNa-Ga混合融液を窒素圧下で加熱することでGaN単結晶を作製するナトリウム(Na)フラックス法を用いた。金属EuもしくはGdを添加したNa-Ga混合融液を出発原料とし,それぞれ5MPaの窒素圧力下で650-750℃で200h加熱した。 Euを添加したNa-Ga混合融液から得られた生成物を,エタノールや王水でNaやNa-Ga金属間化合物を融解除去し,GaN結晶のみを取り出した。約500μm,幅5-10μmの細長い単結晶からなるGaN結晶集合体が得られ,その透明な部分は365nmの紫外線を当てると室温下で強い赤色発光を示した。フォトルミネッセンス測定では、Eu^<3+>の^5D_0→^7F_2のf軌道間遷移による強い発光スペクトルが約621nmに観測され、またその他の4f軌道間遷移による発光スペクトルも観測された。カソードルミネッセンス測定では、母体のGaNのバンド端近傍の発光が365nmに,Eu^<3+>イオンの4f軌道間遷移の発光が600-665nm間に多数観察された。粉末X線回折測定による得られた結晶の格子定数はa=3.1894(1)Å,c=5.1860(3)Åであり、なにもドープされていないGaNのそれと比較してc軸長が僅かに0.001Å伸びていた。このEuがドープされたバルクGaN単結晶集合体をNaフラックス法により合成することに成功し,Eu^<3+>イオンによる発光特性の発現を確認することができた成果は,論文として発表した。 Gdを添加したNa-Ga混合融液からもGaN単結晶集合体を得ることができたが,それらのSQUID磁束計による磁化率測定の結果からは,磁性特性の発現は観測されなかった。
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