研究初年度において構築を完了した顕微分光学的手法による光学系を利用し、レーザー集光照射加熱法による局所的結晶化プロセスにおけるレーザー照射位置近傍の温度プロファイルおよび温度変化に関する計測を実施した。また、有限要素法に基づく伝熱モデルを改良し、計測結果に基づく温度プロファイルとの比較を行い、計測手法および伝熱モデルの相互検証から双方の妥当性に関する情報を得た。各々の概要は以下の通りである。 半導体レーザー(波長808nm、最大出力1.20W)を熱源用レーザーとし、この波長域に吸収帯を有し熱源となるDr^<3+>イオンおよび蛍光スペクトルが温度指標となるEr^<3+>イオンをビスマスホウ酸系ガラス組成に対してそれぞれ9mol%、1mol%添加することによりモデル試料とした。Arイオンレーザー(波長488nm)励起による顕微蛍光スペクトル測定で蛍光帯のブランチ比を指標として、照射裏面の温度分布およびその経時変化を計測した。局所温度計測にあたり、顕微鏡用ホットステージを用いた試料全体加熱時の蛍光スペクトルを参照して温度を決定した。加熱点の最高到達温度はレーザー照射エネルギーおよび照射時間に依存し、ガラス転移温度、軟化温度、結晶化温度に達することを示し、従来提案の本プロセスにおける照射痕形成モデルを支持した。一方、有限要素法を用いた伝熱モデル計算では、上記のビスマスホウ酸系ガラスにおける熱物性値とエネルギー消失に関するより現実的モデル化への改良を加えた結果、最高到達温度および流動変形領域(軟化温度境界内部に相当)に関して実測に矛盾しない温度プロファイルを再現した。不連続境界の移動モデルの導入、高温物性値の考慮により、さらに現実的モデルとして高度化が期待されることが示唆された。
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