研究概要 |
本研究では2軸磁場を用いた新規成形プロセスにより,特性の優れた結晶軸を配両させた高機能性セラミックスを創製することを目的とした.2軸磁場の新規性は,配向困難軸を配向させられる点である.水平面内で複数方向から磁場を連続的に印加すると,磁場に垂直な方向は回転軸方向に限られるので,反磁性磁化率の大きなc軸を揃えられる.本年度は回転磁場における条件を制御して,配向度の向上を目指すことを試みた.配向度に及ぼす2軸磁場を得るためのモールドの回転数および熱処理温度依存性をZnO粉体を用いて調べた.スラリーを調製後,モールド中にキャストして,磁場中で回転数0-60rpmの範囲で変化させた.成形から焼結に掛けての配向度向上については1000-1300度の範囲で熱処理し,XRDで配向を確認後,配向度をLotgering factorを求めることによって調べた. 回転数と成形体配向度の関係を調べた結果,回転数とともに配向度は上昇し,30rpmで最大となり,それ以上の回転数では配向度に変化は見られなかった.磁場は同時に複数方向から印加することが最良であるが,回転によって印加した場合においても同様な効果が確認された.また,回転数が小さい場合,結晶の配向は下がることも明らかになった. 配向度の熱処理温度については,熱処理温度の上昇とともにLotgering factorに由来する配向度は,0.5から0.99まで増加することがわかった.室温での配向度は0.5程度であるが,焼結とともに緻密化と粒成長により,配向が促進されることが明らかとなった.以上のように配向度を向上させるためのパラメータを明らかにした. なお,c軸配向酸化亜鉛での特性向上を示す予定であったが,酸化亜鉛結晶の正負の方向までは揃えられなかったため,配向操作の後に分極操作の可能な強誘電体結晶で,かつ反磁性磁化率と分極方向が同じニオブ酸系酸化物に適用することを目指す.
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