リン酸カルシウム系の生体活性材料では、ガラス材料は結晶に比べて、早期に生体骨と結合するという特徴がある。このガラスを一部結晶化することにより、粒子径をマイクロ、更にはナノサイズまで小さくし、粒界にガラスを生成、多相系からなる組織を形成することによる複合組織の構築により、機械的性質の改善にも貢献する。リン酸カルシウム系の材料で、生体活性を持たせるためにはP含有量を少なくする必要があるが、このような組成では結晶化がおきてしまい、ガラスは生成しない。ガラスを生成するには、シリカなどのガラス生成元素を導入する必要がある。しかし、これらの生体内に存在しない元素が、人体で溶出し問題になることもある。そこで、本申請課題では共晶点付近での組成を持つ融液を超急冷することにより、シリカなどのガラス生成元素を含まずにセラミックスをガラス化させる方法を提案した。 本研究で提案する手法は、共晶点付近の組成で、準安定相境界(T_0線)が相互に交わらない点を利用することにより、融液を超急冷し、ガラスを作製する方法である。そこで今年度は、1)既往の研究の状態図を徹底的に調査し、検討を行い、2)検討した状態図を基に、原料を所定の組成で混合し、それを研究室に現有の高周波誘導加熱炉を用いて溶融超急冷によりガラスの作製、その生体親和性の評価を行い、3)合成した試料のラマン分析を行った。
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