本年度は、高単分散性の磁性ポリマー粒子の作製を目的として、種々の条件でマグネタイト(Fe_3O_4)粒子とポリスチレンの複合化粒子合成を試みた。ポリマーとの複合化は、シランカップリング剤で表面処理した磁性粒子をスチレンの重合中に連続滴下することにより行った。なお、重合中にはさらに種類の異なるシランカップリング剤を加え、スチレンと磁性粒子の反応性を高めた。その結果、磁性粒子懸濁液の滴下速度が大きいほど、生成粒子は凝集しやすくなる傾向が見られた。その粒子凝集を抑制するため、重合系に水溶性高分子であるポリビニルピロリドン(PVP)を共存させた。水溶性高分子に関しては、生成ポリマー粒子に吸着し、その立体相互作用によりポリマー粒子間の凝集を抑制することが報告されている。そこで本研究ではPVPが生成ポリスチレン粒子の分散安定性に与える影響を、磁性粒子滴下速度一定の下、種々の分子量のPVPを使って検討した。その結果、分子量4万程度のPVP(K-30)が生成するポリスチレン粒子の安定化に効果があることが判明した。さらに、PVP(K-30)を使い種々のPVP濃度で磁性粒子とポリスチレンを複合化したところ、[PVP]=1.0(g/L)程度で単分散性の高い複合粒子が生成した。PVPのポリマー粒子分散安定化効果を検討するため、PVP(K-30)共存下で磁性粒子滴下速度を増大させる実験も行った。PVPを共存させない系では複合粒子が一時的に合成できても、その後数日以内に複合粒子が凝集したが、PVPを共存させた系では、複合化粒子の生成後、一週間以上経過しても生成複合粒子は安定に分散した。
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