本研究では、機能性セラミックスの粒界機能、特性発現メカニズムを明らかにするため、精密に方位を制御された単結晶同士を高温で張り合わせることにより、モデル粒界を有する双結晶試料を作製し、その粒界を超高分解能STEMにより、観察・分析した。本研究では、ジルコニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、チタニア等のバイクリスタル作製を行った。また、このような粒界部に各種ドーパントをドープすることにより、粒界におけるドーパント効果の本質的理解に挑戦した。 これらのモデルバイクリスタルサンプルに対して、高分解能STEM観察を行った結果、粒界部にはさまざまな種類のサブナノスケールの規則構造が存在することが明らかとなった。また、この構造単位内部には、酸化物が酸素の副構造を取る故に形成される配位数欠損を有するカチオンサイトが存在し、このようなサイトと不純物偏析、余剰エネルギー等の現象が密接に関連することが明らかとなった。異なる種類のセラミックスバイクリスタル粒界を横断的に観察した結果、このような構造的特徴は多くの酸化物粒界に共通するものであることが示唆された。実験的に得られた粒界原子構造の妥当性を検証するために、格子静力学計算、第一原理計算による粒界構造、粒界偏析サイトの理論予測を行った結果、STEM像で得られたドーパント偏析原子サイトが、理論計算ではもっとも偏析エネルギーが低い(偏析しやすい)サイトに対応することが明らかとなった。このような偏析構造と粒界の電気的・機械的特性が密接に関連することが示され、粒界直下における電子構造、化学結合状態、空孔形成メカニズムの重要性が示された。セラミックスの粒界機能を理解するためには更なるサブナノレベルの構造的理解が重要であると考えられる。
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