研究概要 |
本研究では,産業廃棄物として処理され,微粉末であるため自然発火の危険性があるマグネシウム切削チップを繰返し押出加工を有効活用する目的として複合リサイクル化を提案した。信越化学工業(株)製の着磁前のSmCox焼結体ブロックを大気中でアルミナ乳鉢により粉砕し,切削チップと混合した。既存の30トン万能試験機により均質混合した複合冷間圧粉体(φ50mm)を作製し,そのビレットを押出比47,押出温度400℃,押出速度0.5mm/sで押出加工実験を行なった。磁性体の添加量は体積比で0〜30Vol%となるように行なった。切削チップはF1ホイールでも使用されているAZ80系の合金を用いた。磁性体の粒子径に関してはあまり小さいと分散しにくいこと,また酸化,発火等の影響があるため,数十μm程度が良好といえる。詳細はさらに調査が必要である。特にAZ80-20Vo1%SmCo_x材は,もともとの比重が1.8であるのに対し,3.1と変化するが,汎用のフェライト磁石の比重5.0よりも低くなることがわかる。またこの複合押出材に対して着磁を行い,磁化測定を室温により行なった結果を以下に示す。 1)測定終了後、試料が鉄板に張り付く。軽いのが特徴と思われる。 2)外部磁場B=7Tでも磁化が飽和しない。 3)B=7Tで、磁化は約40emu/gで、鉄の飽和磁化(約200emu/g)の5分の1程度 4)残留磁化が、20emu/g程度。 5)保磁力が、9000G[=Oe]程度である。大きい。 6)(BH)Maxは、B=10Gで、H=40000eとすると、4MGOeであり、フェライト磁石程度。 以上,従来のフェライト磁石と同等の性能が得られ,また50%近くもの軽量化が図られることから軽量マグネシウム複合リサイクル材料の開発に成功したといってよい。特に保持力も強いことから,今後,大型化や複合化した後に圧延や鍛造といった塑性加工も可能である。真空蒸留法による再リサイクルも可能であり,非常に興味深い結果が得られた。
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