研究概要 |
世界的規模で急速な高齢化が進む中,整形外科的・歯科的病巣の確実な治療法が望まれている.現在この目的でTi等が使用されているが,埋入後,新生骨が積極的には表面に生成せず,病巣の治癒に長時間を要している.一方,人骨の無機主成分「水酸アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2,以下HApと略す)」を埋入すると,金属に比べ病巣の高速治癒が確認されてはいるが,HApの脆弱性により,強度を要する部位への単独埋入はできない.さらに人骨は純粋HApではないため,埋入後,異物反応を示すなど,現行HApの使用により十分な治癒速度が実現しているとは言えない.強度と生体活性を併せ持つ材料として,金属上へのHApコーティング材が注目されてきたが,従来法による複雑形状のインプラント材への均一なHApコーティングが困難であった.そこで申請者は,水溶液中でのコーティング技術「水中熱基板法」を提案し,HAp中のCa^<2+>をK^+,Mg^<2+>等で置換ならびにPO_4^<3->をCO_3^<2->で置換すると同時に,コラーゲン等の有機成分をも複合化させた「有機-無機複合水酸アパタイト系皮膜」を作製し,その生体適合性を評価することを目的としている.このうち,本年度は,【1.無機複合化HAp膜の作製と評価】【2.有機-無機複合化HAp膜の作製】に取り組んできた. 【1.無機複合化HAp膜の作製】人骨は純粋なHApではなく,HApを構成するCaの一部がKならびにMgと,PO_4の一部がCO_3と置換して存在している.本研究では,HApを構成するCaとKならびにMg,PO_4とCO_3を置換析出させ,K,Mg,CO_3を含有する「無機複合膜」の作製に成功し,すでに生体活性評価も終了している. 【2.有機-無機複合化HAp膜の作製】無機複合化HAp膜の作製で用いた水溶液に,コラーゲンを添加し,「無機-有機ハイブリッド複合膜」の作製に着手している.
|