300-1000℃の温度領域においてプロトン伝導性を示す高温型プロトン伝導体は、燃料電池や電気化学水素分離システム、水素活量センサーなどの電解質材料として期待されている。本研究ではこの高温型プロトン伝導体として、既存の酸化物とは異なる、リン酸塩、ホウ酸塩などのオキソ酸塩に着目し・新規材料の探索・創製を行った。初年度までには、ホストカチオンとして、主として希土類イオンを含むオキソ酸塩について検討してきたが、本年度はこれらに加えて新たに希土類以外のカチオンを含む材料について検討した。その結果、3価カチオンである13族のGa、 Al、 Inを含むメタリン酸塩MP_3O_9が、カチオンの一部にCaを置換固溶させることにより、300-700℃、酸化性から水素還元性雰囲気という幅広い条件においてプロトン伝導性を示すことを見出した。特にこれら13族カチオンのメタリン酸塩は、希土類メタリン酸塩と同様、低いp(H_2O)条件下においてもプロトン伝導性が劣化しない材料であることがわかった。以上の結果は、オキソ酸塩のプロトン伝導体としての可能性を示すものである。一方で、希土類のオキソ酸塩では、混合原子価状態を取り得るCe、 Prのオキソ酸塩の電気伝導特性について詳細な検討を行った。その結果、これらの材料が、2価カチオンで希土類イオンの一部を置換することにより、プロトンとホールの混合伝導性を示し、それぞれの割合が温度や雰囲気によって変化することを明らかにした。これらのオキソ酸塩は、水素を含む還元性雰囲気下においても混合伝導性を示す稀有な材料であり、水素透過膜としての応用が期待される。
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