現状の汎用青色LEDは、サファイア基板上に成膜したGaN系半導体で作製されている。サファイア基板上に連続かつ平坦なGaNをヘテロエピタキシャル成長させるには、AlNバッファ層の開発が欠かせなかった。しかし、サファイアとAlNは絶縁体であるため、複雑な横型LED構造を取らざるを得ない。より高輝度なLEDを作製するには、簡単な縦型LED構造にすることがひとつの方策である。縦型LED構造には、導電性の基板とバッファ層が必要であり、本研究では、その第一歩として導電性バッファ層の開発を試みた。 導電性バッファ層には、抵抗の低い金属であること、GaN成膜時の高温で安定であるため、高融点を有すること、GaNの(0001)面と整合性の良い結晶面を有することなどが求められる。そのような金属バッファ層として、遷移金属窒化物に着目した。 我々はこれまで、遷移金属窒化物としてTiNに着目し、TiN上に連続かつ平坦なGaNの成膜に成功した。連続かつ平坦なGaNの成膜には、TiN膜の1)2軸配向性((111)面配向+面内配向)、2)窒素濃度を化学量論組成より増加させること、3)結晶粒を微細化させること、4)表面平坦性を約10nm以下にすることが必須であることを明らかにした。 他の遷移金属窒化物として、TiNと同じ構造を有するZrN、TaNなどにも着目し、それら金属膜の成膜条件の検討とGaNの成膜も行った。しかし、どちらの膜上でも連続かつ平坦なGaNの成膜に至らなかった。ZrN、TaN膜どちらでもTiNの場合の2)窒素濃度の増加によりGaNの核生成頻度を増加させられたが、1)の配向性および4)の表面平坦性がTiNの場合より劣っているため連続かつ平坦なGaNの成膜に至らなかった。
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