H17年度は、Ti合金基板に化学処理と水熱処理を施すことで、角柱状のアナターゼ型TiO_2結晶からなる膜を合成する手法を確立した。本年度は、光電極・光触媒等の幅広い応用が期待されるSrTiO_3膜をTi基板上にマイルドプロセスで合成する手法、表面形態を制御する手法ついて検討した。Ti基板(8×8×2^t[mm])を353Kに保持した9M H_2O_2/0.1M HCl水溶液中に60min浸漬させた後、0.3〜300mMのSr(OH)_2水溶液に浸漬し、オートクレーブ中にて453K-24hの水熱処理を施した。0.3mM Sr(OH)_2水溶液を用いた水熱処理では、結晶性の良好なアナターゼ型TiO_2膜が合成された。生成したTiO_2結晶は角柱状を呈し、NH_3水溶液を用いた水熱処理で得られる形態とほとんど同じであった。一方、3〜300mM Sr(OH)_2水溶液を用いた場合、結晶性の高いペロブスカイト型SrTiO_3が合成された。生成したSrTiO_3結晶は、3mMでサンゴ状(ロッド径:約50nm)、300mMで球状(直径:約350nm)、30mMではそれらの中間的な形状を呈し、表面形態はSr(OH)_2濃度に強く依存した。これらの膜にAr中で873K-3hの熱処理を施すと、球状のSrTiO_3結晶では焼結が進行し、形態は著しく変化した。一方、サンゴ状の結晶では形態が全く変化せず、熱的安定性が高いことが示唆された。300mM Sr(OH)_2水溶液に300mM、1MのNH_3水溶液を等量加えた混合溶液中で水熱処理を施すと、球状のSrTiO_3結晶が析出し、その平均サイズは添加NH_3濃度が300mMで若干粗大化し(直径:約400nm)、1Mで微細化した(直径:約200nm)。このように、マイルドプロセスにてバリエーションに富んだ3次元構造を有する酸化物膜を合成することができた。
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