研究課題
Fe-24Cr-2Mo合金鋳塊に対して300tプレス機およびスウェージング加工機を使用して熱間および冷間鍛造を施し、高ひずみ導入による結晶粒微細化を試みた。1000℃で減面率84%の熱間鍛造を施した後に、さらに減面率25%および99%の冷間スウェージングを施した試料に1200℃で129.6ksまでの窒素吸収処理を施し、結晶粒径および力学的特性を比較した。減面率25%の冷間スウェージング後に129.6ksの窒素吸収処理を施した試料におけるオーステナイトの平均結晶粒径は約600μmであった。一方、減面率99%の冷間スウェージング後に21.6ksの窒素吸収処理を施した試料におけるオーステナイトの平均結晶粒径は約130μmであった。いずれの試料においても窒素吸収処理により引張強さおよび破断伸びは増加する傾向が認められたが、最大引張強さおよび破断伸びはほぼ同じ値であり、結晶粒微細化による引張特性の顕著な改善効果は認められなかった。そこで、99.9%以上の高い減面率で加工することでさらなる結晶粒微細化を試みた。減面率99.99%以上で加工した後に1.8ksの窒素吸収処理を施した試料において平均結晶粒径20μmのオーステナイト組織が得られたが、この場合においても引張特性の顕著な改善は認められなかった。また、43.2ksの窒素吸収処理を施した厚さ1mmのFe-24Cr-2Mo合金板材の絞り性評価試験を行った結果、430鋼と同等の絞り値が得られたが、その絞り値は316鋼よりも低かった。引張試験および絞り性評価試験を行ったいずれの試料においても、粒界破壊および粒内破壊が混在した破面形態が観察され、結晶粒界での窒素の偏析が示唆された。窒素吸収処理後に微細なオーステナイト組織を得るためには、窒素吸収処理と高ひずみ加工を組み合わせた加工熱処理プロセスの検討が必要であることがわかった。
すべて 2006
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Journal of The Japan Institute of Metals Vol.70,No.4(in press)