研究概要 |
本年度は,ゾルゲル法によって撥水性を有するシリカキセロゲル膜の作製を試み,作製したシリカキセロゲルの構造および膜特性を原子間力顕微鏡(AFM)および接触角測定により調査した.作製したキセロシリカゲル膜は,金属アルコキシドとしてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)またはテトラメチルオルトシリケート(TMOS)と蒸留水の混合液([H_2O]/[Alkoxide]比が3.5(TEOSの場合)および1.53(TMOSの場合))に,酸(HCl)または塩基(NH_4OH)を加え,攪拌しながら40℃で加水分解と重合を2時間進行させた.このとき塩酸または水酸化アンモニウムの添加量によって,加水分解反応および重合速度を調整した.このゾルを1100rpmで回転するガラス基板にスピンコーティングし,その基板をデシケーター内で2日間常温乾燥させることによりシリカキセロゲル膜を得た.その膜をSEMにより観察した結果,TEOSおよびTMOSのいずれをシリカ源として作製したキセロシリカ膜は非常に均一でほぼ無欠陥のシリカ膜を作製することができた.このとき膜厚を表面粗さ計で測定した結果,約350nmであった.また膜構造を変化させる目的で加水分解に用いるHClとTMOSのモル比[HCl]/[TMOS]を0.001から0.5まで変え,そのとき得られた膜をAFMで測定した結果,膜の表面構造が徐々に粗くになり(20nm以上にまで),0.5Mでは表面に割れなどの欠陥が発生した.一方,[HCl]/[TMOS]の比が増加するにつれて徐々に接触角が大きくなり,0.001Mのとき約73度,0.01Mのとき約77度となった.以上の結果から,酸や塩基の添加量を適宜調整することによって,十分な撥水性を有するキセロシリカゲル膜を作製することができた.今後は作製したシリカキセロゲル膜に水素イオンとの間に強い相互作用(引力)を示すSi_3N_4のナノ粒子を担持させることでpH感応性を付与し,その膜で改質したAFMカンチレバーを組み込み,水素イオン分布顕微鏡を開発する計画である.
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