研究概要 |
有機単分子膜をシリコン基板上へ直接結合させるために,フッ化アンモニウムを用いて,水素終端化シリコン表面の作製を行った。フッ化アンモニウム処理後のシリコン基板表面のxpsスペクトルにはSiO2(自然酸化膜)に起因するピークが観測されなかった。このことは、フッ化アンモニウム処理後の基板表面ではSiO2が除去されていることを示す。また,走査型プローブ顕微鏡により,シリコン2原子層の高さに相当する約0.3nmのステップからなるSi(111)面の表面形状像を観察できた。これらの結果は,シリコン基板表面が水素終端化されたことを示唆する。この基板表面上に,液相法により,異なる分子鎖を有するアルキル系有機単分子膜を成膜した。エリプソメータおよび水滴接触角測定の結果から,有機単分子膜が形成されていることを確認した。このときの膜厚および接触角は,1.0〜2.2nm,107°〜110°となり,理論値と良い一致を示した。この有機単分子膜の2次元的な分子配列を調べるために,微小角散乱X線測定をおこなった。分子鎖長の違いによる構造変化は認められなかった。また,その結晶構造は,アモルファスであった.これらのアルキル単分子膜を利用し,真空紫外光によるパターニングをおこない,分子鎖長の異なる有機単分子膜のマイクロパターンを作製した。その後,走査型プローブ顕微鏡により電流測定を行ったが,電流を計測することはできなかった。一方,フェニルアセチレンを原料とした単分子膜の形成をおこない,同様の計測を行った結果,アルキル系単分子膜よりも高い導電性を示した.これは,アセチレン中に存在するπ共役電子の影響によるものであると考えられる。 また、これらの有機単分子膜上での生体分子の固定化を試みた。疎水性官能基を有する表面上で、生体分子の吸着量が増加した。さらに、分極の大きいフッ素系有機分子上で生体分子の固定化を行った結果、生体分子の吸着挙動が異なった。これは、有機単分子膜表面の電荷と生体分子の有する電荷に起因するためである。
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