研究課題
真空アークによる金属表面の酸化膜除去については、陰極点の移動速度が大きくて除去効率が高い場合と、陰極点の移動速度が小さく除去効率が低い場合がある。前者の場合、処理後の表面粗さは小さく、後者の場合は大きくなる。真空アーク陰極点のこれら2つの挙動モードについては、発現理由が未解明な部分が多いが、アルカリ金属の酸化物表面への付着による仕事関数の低下が陰極点の移動速度が大きいモードを引き起こすことから、陰極点のエネルギー密度変化が関係しているのではないかと予想される。除去効率が大きく変化する現象については、前述のように陰極点の移動速度が大きく変化する場合のほかに、陰極点の挙動に大きな変化は見られないが、放電電圧が変化することにより除去効率が変化する場合がある。これは、電極間距離を連続的に変化させた場合に、ある距離で放電電圧が不連続に変化することによって起こる。本研究は、これらのモードの発生機構を明らかにするのが目的のひとつであるが、本年度はこの電極間距離による異なるモードの発現について調べた。真空アーク放電で発生したプラズマ中に探針を挿入し、陰極を基準として放電空間中の電位分布を計測した。真空アーク放電プラズマ中では、電極間方向の放電空間中の大部分では、ほぼ一定の電位分布となっており、電極間距離に関らず、すなわちモードによらず、陰極近傍に10Vほどの陰極電圧降下が観測された。一方、電極間距離が大きくて放電電圧が高いモードにおいては、陽極近辺で陽極電圧降下が発生しており、モード間の放電電圧の差がこの陽極電圧降下によるものであることが明らかとなった。
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ISIJ International Vol.46・No.2
ページ: 335-338
JSME International Journal, Series B Vol.48・No.3
ページ: 405-410