研究概要 |
1.多孔性無機膜の作製と気体透過速度の測定 Si(OC_2H_5)_4を金属アルコキシドとして用いてシリカのコロイドゾル溶液を調整し,ゾルゲル法によりシリカを主成分とする,多孔性のアモルファスセラミック分離膜を作製した.細孔径は製膜に用いるコロイドゾルの粒径および担持・焼成回数などにより制御した.作製した膜における各種気体の透過速度をガス透過試験装置を用いて測定した結果,Knudsen拡散から表面拡散的な透過傾向が見られ,膜細孔の大きさおよび膜細孔表面との親和性により気体分子分離能が発現する多孔性セラミック膜の作製が可能であった. 2.膜材料のキャラクタリゼーション 膜材料となるシリカコロイドゾル溶液を製膜時と同様な条件で乾燥・焼成して得られるシリカ粉体試料のキャラクタリゼーションをXRD回折測定および気体置換法による真密度測定により行った.動力学径の異なるHeとN_2をプローブ分子として用いた親密度測定では,分子サイズの大きなN_2で測定した場合に,SiO_2の一般的な密度よりも小さな値が得られ,分子サイズによって拡散可能な容積が異なっている事が示された. 3.仮想膜の作製と膜透過シミュレーション 実在系の膜材料のキャラクタリゼーションで得られたシリカの動径分布関数および密度を用いて,溶融-急冷法により密度や膜厚みの異なる仮想的な多孔性アモルファスシリカ膜を計算機上に作製し,各種ガス(He,H_2,N_2)の透過シミュレーションを非平衡分子動力学法を用いて行った.1.8g/mlのシリカではHeの活性化拡散的傾向が見られ,実在のCO_2分離膜におけるの透過速度と近い結果が得られた.さらに膜厚に関する透過速度依存性を検討した結果,34〜51Å以上の膜厚があれば計算機上で均一な膜構造が再現できる可能性が示唆された.
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