本研究では、単一のカラーデジタルビデオカメラを用いた二色LIF法を気液二相流に適用し、気泡挙動により気泡周囲の物質移動特性がどのように変化するかについて定量的に調べることを目的とする。本年度は、単一気泡からの物質移動特性を定量化することを目的とした。気泡からの物質移動特性を定量化するためには、気泡速度および周囲流体の速度に加えて、気泡溶解による液中における気体濃度を定量化する必要がある。気泡上昇速度と流体速度については、それぞれPTVおよびPIVを用いて測定することとした。測定精度を検証するために、PTVについては純水中を上昇する空気気泡の速度を、またPIVについては円管内層流の速度分布を測定した結果、いずれも文献値および解析解とそれぞれ良好に一致する事が確認された。 また、気体濃度の定量化には、本研究室において開発した二色LIF法を使用した。しかし、従来の光学系では対象とする気泡径に対して空間分解能が不十分であったため、新たにデジタルマイクロスコープシステムを用いたpH測定システムを開発した。その結果、狭小領域についても高精度にpH測定が可能となった。そこで本システムを用いて、気泡からの気体溶解特性について調べた。具体的な方法としては、静止流体中にSO_2気泡を固定し、その溶解過程におけるpH分布の経時変化を定量化するとともに、液相基準の物質移動係数からシャーウッド数を算出し、気体溶解時の状況と物質移動特性の関係について調べた。その結果、気泡注入後暫くの間は、溶解ガスのフィンガリング現象によってpH分布が非定常的に変化するが、数秒後にpH分布はほぼ変化しなくなり溶解速度が定常に達する事が確認された。さらに、算出したシャーウッド数より、気泡注入速度は溶解が定常に達した後の物質移動速度にも影響を与える事が明らかとなり、初期の対流速度が気体溶解特性に大きな影響を及ぼす事がわかった。
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